交通事故⑧
待合室には救急搬送された人の関係者だけが待たされていた。
私以外にもおばさんが一人待っていて電話をしていた。
おばさん「…そうなんよ。お父さん倒れて救急車で今来たんよ。もうダメかもって。まぁ覚悟はしていたからねぇ…」
おばさんは慌てることなく、世間話をするかのように電話をしていた。
電話を終えたおばさんが話しかけてきた。
おばさん「おねぇちゃんどうしたの?大丈夫?そんなに泣いて、事故かなんか?」
私「娘なんです。事故で車に轢かれて…」
おばさん「そう…可哀そうに…」
私はまた泣いた。おばさんとは状況が違う。
同じ救急外来待合室に居てもおばさんに私の気持ちなんて分からない。
待っている間に何度か看護師さんが私の様子を見に来てくれた。
看護師「お母さんどう?少しは落ち着いた?」
私「娘はどんな状況ですか?」
看護師「まだ検査中で何とも言えません」
このやり取りが何度も続いた。
何もわからないまま時間だけが過ぎて行った。
しばらくすると、友人ママとAちゃんの友人が私の父と母を連れて来てくれた。
ドクターヘリに乗る前に搬送先が決定したので電話をしておいたからだ。
友人ママと私の両親は家が近い。
私「今から○○病院に搬送される。父と母を一緒に車に連れて来てほしい。父と母2人だけだと気が動転しているから、ちゃんと運転できるかどうか不安だから」
友人ママ「分かった。一緒に連れて行く。私たちが行くまでもう少しの間、一人にするけど頑張って」
1人で待っている時間が1時間は過ぎただろうか…そんな時に友人ママが到着した。
今まで1人で不安だったので、知っている人を見たら涙が溢れ出た。
私「友人ママー…Aちゃんが…Aちゃんが…」
友人ママ「Aちゃんママ!!!Aちゃんは?どうなってるの?状況は??」
私の父と母も私のそんな姿を見たことはなく、呆然と立ちすくんでいた。
私「何も分からない…検査に入ったままで分からない。警察からはAちゃんが自転車で青信号を渡ったところで、信号無視の車に撥ねられたって…かなりスピードが出ていたから、Aちゃんは30m位飛ばされてるって。救急車の中ではちゃんと意識はあった。」
そこまで一気に話すと、また泣いた。
友人ママもAちゃんの友人もみんな泣いた。
そんな時、先生がやってきた。
先生「検査が終わったので、説明をします」
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