交通事故⑱
担任「お母さん遅くなりました。こんな時間になってしまってすみません」
私「わざわざありがとうございます」
担任「A~本当に無事で良かった。Aの顔を見るまで不安で仕方なかったよ。痛みはどう?」
Aちゃん「痛みは大丈夫。学校のみんなは大丈夫?」
担任「みんな全然元気がないよ。Aがいないんだからなぁ…俺もAの顔見れて安心した。さぁご飯を食べさせてあげよう」
Aちゃん「無理無理無理…自分でできるから」
担任「そうか…」
Aちゃんは一人で食べようとしたものの、片目だけしか開かないので、距離感がつかめず上手くスプーンが使えずに食べられなかった。
担任「ほらぁ…クラスのみんなには内緒にしておくから。はいスプーン貸して」
そう言ってスプーンを取り上げAちゃんにご飯を食べさせていた。
担任はすごく嬉しそうだった。
二人で募る話もあるだろうと思い、私は待合室で待機することにした。
一時間ほど居ただろうか、担任が出てきて言った。
担任「ホントあれだけの事故で、この怪我で済んで良かったです。Aに会えて少し安心しました。明日も明後日もお見舞いに来ます」
私「先生はそれでなくても忙しいのに、無理しなくて大丈夫ですよ」
担任「僕がAに会いたいんです。担任なのにいつも相談に乗ってもらって、僕がAと話をしたいんです」
有難かった。こんなにも周りのみんなから心配されて、毎日会いたいって言われる娘を誇りに思った。
面会時間も終わったので家に帰り、Aちゃんにラインをした。
私「今日は一気にみんなが来て疲れたんじゃない?」
Aちゃん「大丈夫。『死んでもおかしくない事故だった」ってみんな言ってた。そんなにひどかったの?」
私「ひどかったよ。ママも生きた心地がしなかった。本当に痛くないの?無理してない?」
Aちゃん「本当は痛いよ。でも『痛い』って言っても早く治る訳じゃないし、みんながもっと心配するだけだし。」
私「Aちゃんは『痛い』って言っていいんだよ。せめてママには言って欲しいよ。Aちゃんは強いね。ママずっと泣いてる」
Aちゃん「ホントはHCUで過ごした夜は泣いた。次の日から学校に行けると思ってたし、やりたいこともいっぱいあった。信号を守ったのに何でAがこんな目に合わないといけないんだって悔しくて泣いた。でもみんなの前では絶対泣かない。だからママももう泣かないで」
私「そうだよね。Aちゃんが一番辛いよね。ママももう泣かないようにするね」
そう言いながらも泣いた。
いつもAちゃんが座る椅子にAちゃんは居ない。AちゃんのベッドにもAちゃんは居ない。Aちゃんの笑い声も聞こえない。
何気ない日常はあんなにも幸せだったんだと感じた。
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